無宗教こそ日本の力
無宗教こそ日本人の宗教である 島田裕巳
1.あなたは宗教を信じますか?多くの日本人は、特定の宗教を信じているわけではないので、信じてないと答えるしかない。自分は無宗教だという答え方だ。それが現実である以上、仕方ないのだ。
各種の世論調査によると、何か宗教を信じているかの問いに対して、日本人の7割は信じてないである。世界では、全体の7割から9割が神を信じているという結果だ。日本人の信仰率の低さは際立っている。しかし、宗教にまったく無縁の日本人はいない。正月には初詣に神社に行き、結婚式はキリスト教式で挙げて、葬式は仏式で営む。9・11テロの世界情勢等により、宗教こそが世界平和を阻害するものではないか。ある特定の宗教を信じることは、他の宗教を認めないことであり、排他排外主義に結びつく。だったら、無宗教である方が賢明ではないか。いまや日本人は無宗教であることに価値を見出すようになっている。
2.無宗教という言葉は英語には無かった。not believe in particular religionくらいか。日本人は八百万の神ではなく、唯一絶対の創造神を実感できない。しかし、無神論atheism<エイスィイスム>ではない。日本人は仏教とともに神道を信仰していた。仏教と神道が習合していた。
3.無宗教は社会に宗教的対立を生まない。宗教対立は教義の前に、利害の対立が絡んでいる。
4.世界の宗教のベースは無宗教である。生まれながらに行っている宗教活動は、たんなる習俗にすぎない。信仰を意識するのは、他の宗教の人間が現れたときである。世界中の多くの人達は、無宗教の日本人と変わらない。
5.無宗教が世界を救う。それぞれの宗教は平和活動に熱心である。しかし、世界平和を阻害しているのは、宗教だと言える。無宗教は宗教の自由を確保する。さらに、人としての生き方にまで広がってゆく。無宗教は自己を解き放つ。無の宗教には無限の自由がある。それは世界そのものである。
6.無宗教の国が持つ存在意義。日本ほど安全な国はない。日本は経済力があり、さまざまな点で大都市でも地方でも豊かである。今後、海外から人が入って来るのも必然である。日本は外国文化にたいしてオープンな社会である。日本という国が世界の縮図・他民族国家になる。