老年について
日経ビジネス
日本は人口の3分の1が65歳以上の高齢者で、高齢化社会になった。
ローマの政治家・哲学者キケロは著書「老年について」で、老いは仕事ができなくなり、肉体が弱くなり、快楽がなくなり、死に近づく。しかし、経験を生かす仕事、落ち着きがある、ほどほどこそが真の快楽であり、老年期の目的は自分が楽しむことで良いと言った。
フランスの作家・哲学者ボーヴォワールは著書「老い」で、老年期は若い頃と同じことをしようとすると、うまくいかない。人生に意義を与えるような、別の目的を追求せよと言った。
フランスの思想家・哲学者モンティーニュは、執筆の中で、老いという現象を、もう十分生きた証拠と位置付けた。言い換えると、これまで周囲の人たちや世の中に貢献してきたということだから、老年期は自分のために生きよと言った。
老年期は、長年生産をしてきた人間が、老いを迎えて、自分の人生を楽しむ時期になったということである。老いとは、肉体を含めた成熟なのであり、成熟を楽しめばよいのだ。誰もが安心して老い、人生の成熟を楽しめる社会をつくることが、目指すべき高齢化社会である。