宗教ー触らぬ神に祟りなし
逆説の世界史 井沢元彦
人間が不合理に動くとき、背景に宗教がある。宗教は不合理な物である。主な宗教は西洋=キリスト教、中東=イスラム教、中国、朝鮮=儒教・朱子学、日本=寄せ鍋(神道、天皇信仰、仏教、儒教)。宗教の起源は2つある。①庶民は、食糧に不自由ない暮らしを神に祈る。②衣食住が足りた王族は、死後の良生活=来世を希求する。
西洋のユダヤ教、キリスト教、イスラム教は一神教である。しかも、一神教の元の神はみな同じである。ユダヤ教はヤハウェ、キリスト教はイエス(ヤハウェ、精霊と三位一体)、イスラム教はアッラー。BC14世紀、古代エジプトのアクエンアテン王が、太陽信仰の一神教に改宗したのが一神教の初出である。同時代近辺に生まれて出エジプトのモーゼが、一神教のユダヤ教における重要な予言者である。一神教は誤りがない独善的な宗教である。旧約聖書、新約聖書、コーランに書いてある事を訂正できない欠点がある。一神教のユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、パレスチナ・イスラエル戦争問題のように解決の糸口がなく、こじれている。
儒教は①孝を第1価値に置いた。先祖を敬い改善力が弱くなった。一族のえこひいきが蔓延した。②士農工商という身分制度を作り階層を固定し、独裁主義で科学技術や商業貿易を軽視し発展を遅らせた。③朱子学は、実証主義でなく空理空論・現実無視で世の中の変化に対応できなくした。
日本は言霊信仰があり、悪いことを言うと実現するので言わないという欠点が残っている。最悪の事を考えないので大失敗をする危険がある。
宗教は庶民が食糧に不自由ない暮らしを神に祈り、こころの安寧を得るという良い面もある。しかし、来世の希求や一神教の独善性、儒教の独裁性と朱子学の空理空論・現実無視、言霊信仰など欠点が大きすぎる。一方、国家間戦争には、民衆をまとめる効果があった。
触らぬ神に祟りなし。