やくざマネーと20兆円闇経済

やくざマネーと20兆円闇経済

ブラックマネー 須田慎一郎

暴力団(やくざ)の伝統的なシノギ(ビジネス)は、ヤミ金融、売春、バクチであった。さらに飲食店、風俗のみかじめ料、拳銃・麻薬など非合法商品取引が加わる。こうしたストレートにイリーガルなビジネスは、むずかしくなっている。警察の1962年、1970年の頂上作戦および1993年暴対法により、1963年ピーク時は18万人いた暴力団員は2010年には9万人に半減している。1990年中盤以降、暴力団は表経済に進出してきた。日本の地下経済は20兆円を超える規模であり、暴力団の非合法所得は2兆円を超える。引退した山口組5代目渡辺芳則組長は5000億円の個人資産があった。欧米のマフィアは表の仕事を持ち善良な市民を装っているが、日本の暴力団は変わった組織である。どこに拠点があるかハッキリしている。暴力団のメンバー・命令系統もハッキリしている。しかし、最近、欧米並みのマフィア化が進んでいる。

フロント企業(暴力団の先兵)は暴力団の活動資金になる。闇勢力の分野・金融、建設、不動産、飲食、風俗、リース、廃棄物処理などに、1980年代後半バブル時代になり、地上げ(背後に暴力の影)、土地ブローカーが加わった。

2001年に小泉純一郎政権が誕生し、新自由主義・構造改革・市場原理主義、規制緩和が進められた。同時にやくざの世界も、武闘派よりも組織に納めるカネの量・資金力が評価されるようになった。暴力を行使する裏付けとなるカネが不可欠になったのだ。山口組6代目司忍組長は名古屋を本拠とする。この背景には名古屋経済圏の繁栄がある。闇勢力がかかわる土木建設や飲食店・風俗も寄与し潤う。経済の表も裏も無くなってしまった。

2006年金融商品取引法ができた。反社勢力排除の流れができた。東証、ジャスダックから暴力団の排除を目指す。2003年頃から株と不動産のミニバブルが起きた。闇社会では経済ヤクザが台頭した。稲川会2代目石井進会長、山口組5代目若頭宅見勝若頭などが前時代の先達。暴力団のビジネスは広がる。証券取引への進出、マーロンダリング、M&A、証券化ビジネス、投資ファンド、タックスヘイブン。全銀協はマネーロンダリング対策を作成した。欧米ではイリーガルな財産は全額没収がルール、マネロンのニーズが高い。東京都心部の不動産高騰の元を作ったREIT(不動産投資信託)、不動産ファンド、不動産の証券化などがある。REITの動きは2007年は2003年の2.6倍になった。2007年サブプライムローン問題で1.2倍に下落した。2006年ライブドア事件が起きた。投資事業組合という仕組みを利用した。誰がお金を出しているか、どんな投資をするか、利益配分報告も不要、金の流れも不明で売上操作の粉飾決算が行われたのだ。この後、外資は何でもありの新興市場株をファンドに組み込まないことをルール化した。タヌキはお札が葉っぱだと知っているから、なるべく早く本物と交換したい。事業内容と所有する不動産に価値がある株があれば、交換したがるのだ。