紙幣空発、インフレ、利上、不況、金融暴落

紙幣空発、インフレ、利上、不況、金融暴落

暴落ドミノ 澤上篤人

金融機関に消化されない公債紙幣を増発すると、悪性インフレになる。戦前の高橋蔵相を襲撃した2.26事件の後、軍事費増額のため、国債の大量発行をし、悪性インフレになり、国の生産力、消費力が減退し、国民は困窮した。その結果、国民は危険な革命的な現状打開を支持し、支那事変を拡大した。

戦後、1971年アメリカは金ドル交換停止とドルの変動相場制移行のニクソン・ショックが起きた。財政赤字の米政府は大量のドル紙幣発行をした。インフレになった。更に1973年OPECの原油価格引き上げで、1バレル3ドルが10ドルに引き上げられた。1979年イラン革命で第2次オイルショックがあり1バレル30ドルになった。世界のエネルギーコストが10倍になった。過剰流動性インフレで金利も15%になり米国民は約20年苦しんだ。1981年レーガン大統領は小さな政府と市場経済の徹底(民営化、規制緩和)で民間活力喚起政策を打ち出した。1992年景気回復宣言が出た。

1995年頃から2022年最近までグローバル化によるインフレなきディスインフレ時代になった。世界経済のグローバル化による生活必需品の低価格化が貢献した。しかし、グローバル化(低コスト生産)は、新興国・途上国の人々や先進国のローテク労働者の低賃金化を推進し、格差拡大を進めた。低賃金の人々にインフレが加わると、コストプッシュ型インフレになる。更に2020年新型コロナウイルスによるパンデミックが発生した。グローバル生産供給体制は分断された。2022年ロシア・ウクライナ戦争が始まり、エネルギー・食料供給が分断された。また、2022年から米中貿易摩擦による中国製品の締め出しが始まった。アメリカインフレ率(前年比)と金利は高まっている。2021年インフレ率4%(金利0.25%)、2022年8%(3%)、2023年3%(5.5%)。世界的なインフレ圧力は高まってきた。「なんとかショック」がいつ発生してもおかしくない。

世界の債務残高は2023年300兆ドル(リーマンショック前から70%増加)(世界経済の360%)。金融マーケットはフェアバリュ金利5%まで売られる。株式と債券(国債が主)が暴落すると、その寸前まであるはずだった価値が蒸発ーこの蒸発を資産デフレという。日本の1990年のバブル崩壊は地価や株価の下落で1200兆円(日本経済の2.5倍)資産減少した。2020年でデフレから脱出した。失われた30年で、政府経済対策で600兆円、家計の得べかりし利子600兆円で穴埋めした。資産デフレは資金の枯渇、金利上昇になる。リーマンショック後の空前の資金供給は今後は無理だ。

日銀は1995年超低金利政策、1999年ゼロ金利、2016年マイナス金利になった。2013年着任の黒田東彦総裁は国債購入を推進し2023年600兆円(発行残高の53%)に増やした。国債は金融機関から発行直後買い入れ、日銀の当座預金で預かっている。インフレにならなかった。1%の金利上昇で5兆円の利払いが生じるが日銀の収入になる。国債は満期償還で政府は日銀利子を払うが、政府=日銀なので問題ない。さらに日銀は株式ETFを40兆円購入したが、現在含み益が30兆円で70兆円になっている。ただ株式なのでいくら暴落するか分からない。

世界の債務残高は2023年300兆ドル(世界のGDPの360%、日本円4京円)。ノンバンク・シャドーバンク(ヘッジファンド、投資ファンド)の金融資産は240兆ドル(2007年から2.4倍、銀行より資産多い)。ゼロ金利下でデリバティブ、オプション取引。企業債務も1兆ドル(2倍)。個人の住宅ローンも要注意。中国債務残高2022年50兆ドル(中国GDPの3倍)。中国は住宅・不動産がGDPの30%。ゼロ金利の巨額の投資は金利上昇に耐えられない。総売りの暴落相場は、もはや不可避だ。