現実を見よー中日新聞社説
中日新聞社説2023年12月30日
人口減は換言すれば「社会が貧しくなる」。人が減れば消費が落ち込み、経済が停滞します。賃金が増えないばかりか、雇用を失う悪循環です。
若い世代が結婚や出産・子育てに向かわない最大の要因は、自分や社会の将来に希望を持てないことや、生きづらい社会という現実に直面しているからです。安定した職につくにも、大学卒業を目指さないと難しい状況で、親世代は子供の教育費捻出に苦労しています。しかも大卒後に正社員になっても賃金は長らく上がっていません。一方、所得に占める税や社会保険料の負担割合を示す国民負担率は、70代が30代だった時代には約3割でしたが、今は5割に迫り、実質的に賃金の半分しか手に出来ないのが現状です。また、就労に制約のある人は自らのキャリア形成や賃金の面で不利になっています。
年配世代には、子育ては自力でと考える人が多いかもしれませんが、若い世代を取り巻く環境は厳しく、個人の力だけでは限界があります。結婚や出産子育ては社会全体で支えねばならないのです。