老年の豊かさについて
生を愉しみ、老いにたじろがず 渡部昇一
人には急に成長し、急に老いる年齢というものがあることを、私は痛感する。成長するときは反省や工夫をしないが、老化に向かう時は考えざるをえない。
老年の豊かさとは、「少数の友達と安定した財産・富」。シナ学者の林語堂は「年をとると、ある程度の富が重要になる」と本に書いてある。日本で最初の東大哲学の教師のケーベル先生は、「老年で欲しいものは少数の友達と安定した財産」と言っている。西洋の偉人も東洋の偉人も、同じことを言っている。私はこれは本音だと思うのです。
60歳の頃「われ老いたり」つまり「将来のことを考えなくなってしまった」と気づきました。「これはいかぬ、では、何をしよう」ということで、私は詩の暗記に挑戦しました。結果、楽々覚えられる。年をとれば記憶力が悪くなると言うのは本当ではない。老年は何かに挑戦すべきである。
落ち着ける居場所をつくる。孤独は、人間の精神性を高める。年をとってからの読書は一つの贅沢である。
健康法は万歩主義がいい。頭脳と肉体の両方で、超スローペースで、日々休まず実行する万歩主義が、老人の長生き健康法にいい。
自分のリズムで暮らす。老後の夫婦関係は、それぞれ自分の好みの事をすればよい。奥さんの負担をできるだけ少なくして、人生を楽しむことに時間を費やすようにギアを切りかえたらいい。食事も内(ない)食、中(なか)食、外(がい)食をうまく利用すると、おいしくて、バラエティーがあり、安い食事が楽しめる。