貯蓄率ゼロ経済
(貯蓄率ゼロ経済 櫨浩一)
日本は少子高齢化になり、老後の貯蓄よりも、老後の貯蓄取り崩しの時代になり、2000年頃から貯蓄率ゼロの時代になった。貯蓄率が5%程度あった時は、経常収支黒字・円高・物価安定・低金利であったが、貯蓄率ゼロでは経常収支赤字・円安・インフレ・高金利の時代になる。
日本の金融資産は、家計、企業、政府の合計である。経常(通常年の)収支は、金融資産+海外との財・サービス・利子・配当の合計である。
日本の経常収支=家計の貯蓄余剰+企業の資金借り入れ+財政赤字
経常収支が赤字になると、余った円を売って不足のドルを買うため、円安になる。家計の貯蓄がゼロ・マイナスで失業・賃金減少、企業は債務返済が困難で収益悪化、財政は赤字拡大になる。
①少子高齢化・貯蓄率ゼロ経済では、供給力の低下によるインフレになる。財貨・サービスの費用上昇によるコストプッシュ・インフレもある。更に円安による輸入物価上昇インフレもある。
②貯蓄率ゼロ経済は高金利。更にインフレになると金融政策の金利は上昇する。家計貯蓄ゼロになり、資金需要超過になる。海外資金借入により、お金の流れを得るため、国内金利高になり金利が上がる。簡単には減らない財政赤字が長期金利を引き上げる。
家計が貯蓄する目的は、70歳以上の高齢世帯では、病気や災害への備え7割、老後の生活資金6割、遺産2割だが、実際は死亡の不確実性により遺産は多い。
高齢者が働くことが問題解決のカギになる。貯蓄低減の減速と供給力不足に対処することだ。
幻の国内貯蓄。家計貯蓄を企業が借り入れる政策は、1980年後半の不動産、株式バブルで失敗した。家計貯蓄の借り手は政府しかない。無駄な公共投資が多いが。これは、家計が政府に貸し付けていることになる。家計が自分の1400兆円の金融資産を取り崩して使おうとすれば、1200兆円の国への貸付を国から返済してもらう必要がある。その時、国の借金を支払うのは、国民である。税金で負担するしかない。結局、金融資産があっても、自分に自分で借金していただけである。金利が上昇して国債の価格が低下したり、インフレになって、金融資産の価値が大きく低下して負担することになる。
日本は老後のための貯蓄という家計の要望に応えるべく、生産と所得を重視する経済政策を採ってきた。結局、貯蓄が無駄になる状態になった。解決策は高齢者がもっと働くなどの形で労働時間を増やすことが、究極の解決策になると考えられる。