アメリカ幕府
(沖縄・米軍基地観光ガイド 矢部宏治)
この本は、戦後の日本をよく言い当てていると思う。日本人の納得するのは天皇制である。敗戦後、アメリカ軍が来て、最初は1946年マッカーサーの理想主義3原則・天皇元首・戦争放棄・封建制度廃止、次は1947年3月のトルーマンの共産主義封じ込めパックス・アメリカーナ・ドクトリンに基づいたアメリカ政府方針を、昭和天皇がアメリカ幕府として認めたことで、戦後体制が決まった。鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府、明治幕府、大日本帝国軍幕府に続き、現在はアメリカ幕府である。昭和天皇は敗戦直後の天皇外交で、米軍駐留・沖縄軍事基地・アメリカ単独講和の現在の日本外交の基礎を作った。昭和天皇は共産主義を恐れ、天皇を米軍が守る日米安保体制が国家権力になった。国内で広く支持された天皇制、戦争放棄平和憲法、世界最強米軍の長期駐留が、戦後日本の矛盾を生んでいる。しかし、政治が結果責任・全体利益であるとすると、50年スパンで考えると成功であった。
CIAは岸首相に金を渡して、自民党を作った。正力松太郎の日本テレビも、同じく広告料金を保障されて誕生した。両人ともCIAのエージェントであった。1960年に結ばれた日米新安保条約は、実質は9割がた、アメリカの日本基地使用協定だった。そして、アメリカは自助および相互援助力を持つ国でなければ、相互防衛条約を結べないとして、日本の安全・独立を保障する条約上の義務は無いとしている。米軍の数万人駐留自体が抑止力であり、日本防衛そのものは日本の責任であるとしている。現在の国家権力は昭和国体(天皇・米軍・官僚)から天皇を引いた米軍・官僚共同体である。官僚が米軍の権威をバックに(官僚が条約・法律を解釈する権限を持つ)、アメリカとの関係を優先する・政治家の上に立つ平成以降の新国体を作っている。日米合同委員会は、月2回、在日米軍と外務省を代表に必ず開催されている。これは、上位の取り決めでは都合の悪い項目を密約で決めているものだ。吉田首相の安保条約、日米地位協定もほとんど密約で決めた。日本国憲法→日米安保条約→日米地位協定→日米合同委員会・合意文書(密約)。これが現在の国体である。