失われていない日本
(格差大国アメリカを追う日本のゆくえ 中原圭介)
世界はアングロサクソン流の株主資本主義に染まっている。異民族の混在、移民国家の欧州、南北アメリカ、アフリカ、中国などでは、どうしても、自分第一主義になってしまう。日本は企業、社会もまだ健全です。資本家と労働者、搾取する側とされる側という対立が、あまり見られません。日本は長い稲作文明、単一黄色民族で、まだ和の精神、結(ゆい)の心、助け合い・ゆずりあいの文化があります。庶民を置き去りにした見せかけの成長を続けるアメリカの実態が知られてくるにつれ、失われた30年というとらえ方は間違いだったと認識されるでしょう。歴史上、中間層が厚みを増す国は栄え、中間層が没落する国は衰えます。古代ギリシアもローマ帝国も歴代中国王朝も、中間層の疲弊と没落によって滅んでいったのです。
アメリカ=株高なのに上位5%とそれ以外の格差拡大。数千万人が利用するフードスタンプ。食の世界も大企業が支配して、農民は農奴に。資源価格の高騰による21世紀型インフレと生活コスト上昇。サッチャリズムとレーガノミックスの新自由主義。大都市に増える11㎡・3坪10万円のアパート。流動化した雇用市場。自社株買いと経営者の莫大な報酬。短期志向の株主資本主義。税金を払わないアメリカ企業。スポンサーの合法的なお金で動く政治。永年勤続者でない非正規社員の増加と失業率の低下。庶民は所得が伸びず、インフレで生活費が高くなり、実質所得はマイナス。中間層の没落、低所得層の貧困、富裕層への所得移転。
日本=アメリカより健全な日本社会、犯罪が少なく住みやすい日本、雇用を守ることを優先する日本の会社、サラリーマン経営者は日本企業の象徴、格差をつけない日本型人事体系、大手企業は企業は公共の存在、税金を払うことは企業の責任という自覚を持っている。