ピケティの持てる者、持てない者格差論
(格差大国アメリカを追う日本のゆくえ 中原圭介)
フランスの経済学者トマス・ピケティの「21世紀の資本」が、アメリカでベストセラーになった。ピケティは、資本主義社会では、何も手を打たなければ、持てる者と持てない者の格差は、自然に拡大するという研究成果を発表した。1980年ソ連崩壊以降、所得格差は先進国で拡大した。富から得られる収入(利子率)は平均して、経済全体の成長率より高い。従って、時間がたつほど、持てる者と持てない者の格差は拡大してしまうと言ったのだ。その結果、健全な中間層が減少し、社会の2極化が進行するとした。また、格差拡大の促進要因は、テクノロジーの進歩とグローバリズムの進展がある。経営者、起業家、ITエンジニアのような、コンピュータに代替が難しい職種は報酬が上がる。ブルーカラー労働者はグローバル化によって、賃金水準の低い発展途上国の労働者に代替され、賃金が下がっていく。新自由主義経済(アメリカのレーガン、イギリスのサッチャー)の社会は、格差が拡大している。新自由主義経済の考え方は、イギリスのアダム・スミスの、自由競争には見えざる手が働く、市場にまかせれば、経済はうまくいくという考え方だ。また、アメリカは身一つで海を渡ってきた移民で、「結果の平等」より「機会の平等」を重視する人たちである。マルクスの共産主義の「政府が再分配で所得の格差を埋め、国民の生活水準を平準化する」という考え方を嫌います。格差は大きくても、自分の力で成功をつかんで、富裕層に入ればいいというアメリカン・ドリームの考え方がアメリカ国民に共有されてきた。しかし、近年、格差が世代を超えて固定化される傾向がでてきた。例えば、教育にお金がかかるようになった。アメリカは学歴社会である。最終学歴によって、就ける職種がはっきり違う。貧しい家庭の子は、金のかかる高度な教育を受けられず、よい職に就けないため、次世代でも貧しいままである。ピケティは近年の傾向から、新自由主義と立場を異にした、市場に手を加える経済学の主張をしている。