人間の本質
(大国の掟 佐藤優)
日々の国際情勢の変化は、背景にある「変わらないもの=本質」を把握すると惑わされない。人間の本質とは、食べないと死ぬということである。食物獲得力と所有権が基本になる。そして、環境と所有権の相続方式が、国家・国民の思考・行動様式を規定する。環境とは、シーパワー(自由主義・グローバリスム、孤立主義、米、英、日)の国かランドパワー(専制主義・分離主義・干渉主義、中、露、中東)の国か。所有権の相続方式は長子・指名相続(英、独、日)か平等相続(仏、米)か、これにより、思考・行動方式が異なる。人間の本質は、理性、情念、暴力である。価値を生産すること。遊びをすること。他人の物を奪うこと。これにより、食事を確保する。経済、社会、政治が成り立つ。
歴史は繰り返す。人間の本質が決まっているので、国際情勢は同じパターンで動くことが多い。西洋社会は長い中世の旧態キリスト教文化から、17~18世紀にギリシア文明のルネッサンスにより、理性主義(啓蒙主義)が始まった。合理的、無神論、科学技術の新発明(動力、電気など)により、産業革命が花開いた。そして、英・米が中心となり、シーパワー国の自由主義・グローバリズム・規制解除になった。一方、社会主義も出てきて、公共事業、社会福祉、労働者雇用改善も行われた。福祉国家の大きな政府になり、国家債務が膨れ上がった。これに対応するため、自由競争強化、小さな政府の新自由主義になった。米国が第2次世界大戦後、1強になり、地球各国が集合しワンワールドになった。2000年頃よりコンピューターが発達し、頭脳労働の機械化が進みだした。戦後70年を過ぎると、新自由主義の結果、格差の拡大・経済社会の固定化が進み、グローバリズムは限界に達した。世界は群雄割拠になり、中露のランドパワー新帝国主義が出てきた。世界各国は軍事力強化策を取り出した。米英は他国不干渉の孤立化政策に戻る動きも出てきた。核兵器世界であるので、経済ブロック化、経済安保策、軍事同盟策が求められるようになった。