ミニマリズムの時代
(裏道を行け 橘玲)
私たちは高効率生産技術により、人類史上ありえないような豊かさを実現した。皮肉なことに、それにより、こつこつと普通に生きていたら、収入が極低収入なレベルしか得られなくなった。多数の人の収入レベルが、ベルカーブの1億総中流社会から、ビッグヘッドボディ・ロンググテールの4割低所得下流格差社会になってしまった。これに対処して、大きな経済格差社会・デストピア社会の生存戦略の1つとして、ミニマリズムがある。ミニマリズムは、20世紀初頭からある、実行可能な最小限の要求を掲げる現実主義的な運動である。
考えてみれば、この手もある。超豊かな社会だから、必要最小限の生活で、昔の王侯貴族の生活ができるのだ。これに満足すれば良いのだ。ミニマリズムの内容は、もったいない運動、メンテナンス、クリーニング、サステナブルなどである。現代の製品は、中の上であれば、人間の人生のかなりの時間をカバーしてくれる。新品(レクサスなど)でなければ、極めて安い。2000円のユニクロの服で、1000万円の80坪の土地付40坪のバブル時代の家と400万円の別荘(4月―10月のみ使用なら電気ガス水道は契約しない)(80年は大丈夫)を持ち、和食洋食中華料理を作り、持ち帰り料理を食べ、出来たら酒タバコはやめ、1週間に一度日帰り温泉に行き、車はカローラ(20年は乗れる)、パソコン・テレビ・アマゾンを使う。こんな生活なら、低収入の仕事でもやっていける。常識・ルールの裏道を行くのだ。