メルケル、プーチン、ウクライナ

メルケル、プーチン、ウクライナ

(メルケル カティ・マートン)

1.メルケルは51歳でドイツの初の女性首相になった。民主主義を守り、ドイツをEU盟主へ導き、ユーロ危機も乗り越え、コロナとの戦いにも勝った。武器は倫理と科学であった。2021年9月、16年間の首相任期で、スキャンダルがなく、権力の絶頂で引退して、民主主義のあり方を示した。権力の座を自分の所有物だと勘違いをして、手放そうとしない多くの政治家たちに向けお手本を示した。

メルケルは牧師の娘として秘密警察国家・東独で育つ。物理学を学び、科学者の道へ。東独では、科学は安全な領域だ。1989年ベルリンの壁崩壊、35歳で政治家に転身。社会主義の試みにうんざりしていたので、右寄りの政党を選んだ。男性中心の政界で苦しむも、科学者ならではの有能さで頭角を現す。ドイツを謙虚ながら、自信に満ちた民主主義国にしたいとした。

2.自由主義者メルケルVS.独裁者プーチン。ロシア、中国の独裁政権への対処法は実用本位だ。わずかな合意点を見つける。公衆の面前で独裁者を吊るし上げるのは逆効果と考える。プーチンの目標は超大国のかっての地位を取り戻すことだ。プーチンは東独でKGBの工作員をしていた。市民の情報を集め、ドイツ人を監視していた。東ドイツの恐怖政治・警察国家で育ったメルケルは、プーチンの狡猾さを理解している。年の差2歳の同時代の政治家だ。プーチンは、世界は大国同士の争いの場という歴史退行の世界観であった。メルケルは決して孤立しないという言葉で、民主主義の価値観を共有した共同体・欧州連合を目指した。プーチンは世界有数の大金持ちになって、帝王のような暮らしを追う。メルケルはベルリンの普通のマンション暮らしで、スーパーで自分で買い物をして、シンプルで禁欲的な生活を送る。料理はするが洗濯は夫。音楽とサッカーの大ファン。プーチンが手本にしているのはスターリンだ。プーチンの常習的なウソと相手を混乱させる妄想に対して、メルケルは人権侵害と残虐行為を指摘する。ロシアと西側諸国の話し合いの代表は、メルケルとプーチンになった。

3.2014年、プーチンがヨーロッパ全土でロシアに次ぐ広い国・ウクライナに侵攻した。ウクライナはヒトラーとスターリンが搾取しようとした国だ。肥沃な農地、鉄鉱石・天然ガス・石油など豊かな天然資源を持つ国だ。プーチンはロシアを昔の大国にするため、まずウクライナを勢力圏に加える必要があるのだ。クリミアのウクライナからの独立を宣言させた。ロシアは、西側に対抗する未来を取った。プーチンと渡り合えるのはメルケルだけで、話し合ってもらうことにした。メルケルはあくまで武力行使には反対した。ロシアへの経済制裁を取りまとめた。ロシアはウクライナを勢力圏に留めるため武力に訴えた時点で、ウクライナは侵攻以前よりまとまっている。2022年2月、ロシアはウクライナ東部のドネツク、ルガンスク2州の親ロ派地域の独立を承認し、平和維持を名目にロシア軍を派遣した。バイデン米政権は親ロ派地域への制裁を発表した。イギリス、欧州連合EUも制裁案を出した。日本も3項目制裁を発表した。①2地域のビザ停止、資産凍結②2地域との輸出入禁止③ロシア国債の日本での発行・流通禁止。