マネーの歴史
(マネーの進化史 ニーアル・ファーガリソン)
歴史学者の著者が書いたベストセラー。信用制度、債券、株式、保険、不動産、金融とマネーの歴史を網羅している。ここでは、保険の歴史をまとめる。
保険 お金に関する人間の行動のなかで基本的なものは、将来に備えて貯蓄するという性向だ。なぜかといえば、未来は予測不可能で、この世界は危険に満ちているからだ。ハリケーン・カトリーナの例がある。将来のリスクや不確実性に私たちはどう対処していくか。
最初の本格的な保険は、1300年代に、イタリアで商船に災害が発生した際には帳消しにできる融資だった。本格的な保険は、その後、保険金額の15%の保険料だった。1600年後半には、ロンドン大火で火災保険ができた。海上保険はロイズの保険ができた。無限責任保険だった。保険の理論的基礎は数学者によって作られた。①確率②余命③確実性による確率の定式化④正規分布⑤効用・価値は値段によってではなく効用によって決まるなど。数学者の理論を実践したのは、1744年に、牧師仲間の死亡保険基金を発明した、スコットランド協会の2人の牧師だった。夫牧師の死亡により寡婦と遺児が困窮しないよう死亡確率論から保険基金を創設した。保険は平均の法則により、規模が大きいほど支払金額が予想しやすい。国民保険がベストだ。戦争での死亡、火災保険は、民間では危険すぎる。リスクを国営化するしかない。ドイツのビスマルクは戦争遂行のために保険を推進した。日本も戦前から国民皆兵のために保険を推進した。そして2次大戦後、戦争軍人死亡の国民保険から福祉国家保険に進歩した。最も成功したのは、戦後の日本だ。仕組みはイギリスと変わらない。日本はアメリカの占領が終わった1961年国民皆保険・福祉国家になった。失業保険、年金保険、健康保険など整備された。平均余命、高校進学率など平等主義は効果を上げた。しかも、社会保障費用は国民所得の9%で済んだ。しかし、1980年以降、少子高齢化問題で構造危機に直面している。2020年、65歳以上が3割になって年金保険、健康保険など維持が大変だ。長生き出来ることは個人にとってはありがたい話だが、福祉国家にとって構造改革の必要があり、厄介な問題だ。しかも、世界も人口が高齢化し、危険度が増すという問題が出てきている。