ミルクの歴史
(ミルク進化論 マーク・カーランスキー)
ミルク酪農業は、ヨーロッパ、中東、北アフリカ、インド亜大陸、中央アジア(モンゴル、チベット)で発達した。それは、必ずしも恵まれた土地ではなく、草原や砂漠、極寒地であった。典型は砂漠のベトウイン族である。草木がなく、ラクダだけが生活の全てである。食事はほとんど全てミルク、乳製品のみである。アイスランドもそうだ。しかも、ミルクは数分で有毒細菌が繁殖する。遊牧民は新鮮なミルクをすぐに全て煮沸する。搾りたての温かいミルク以外は安全保障がないのだ。ミルクが出なくなると、肉にした。アジア地区は米、麦が良く取れ、仏教で肉食禁止もあり、酪農は遅れた。
人間の赤ちゃんは母乳を必要とする。母乳は水分87%、乳糖6.8%、脂肪4.5%、タンパク質1.1%である。母乳の出にくい女性や母親のいない赤ちゃん用にミルクが必要な場合もある。その場合、第1が乳母であり、第2はミルクになる。ミルクは、ヒツジ、ヤギ、馬、ロバ、牛、水牛、ヤク、ラクダなどから採れる。この中で、牛が大量のミルクが採れるのと、性格がおとなしいため、搾乳の中心動物となった。しかし、牛は寒い草原の動物であった。古代ギリシア、ローマはヤギ、ヒツジのチーズが多く、中世後半で牛のチーズが多くなった。
ミルクは季節食品であった。牛は子を産まなければ、ミルクが出ない。それは、草が生える春夏の季節だ。現在は、人工授精、牛舎、飼料によって長期間搾乳できる。
ミルクの利用の仕方は、①搾りたてのミルクを飲む。加熱殺菌して飲む。②バターにする。ミルクをひたすら振って脂肪分、タンパク質を分離して、生クリームにして、更に振ってバターにする。塩分を加え保存できるようにする。残った液体はバターミルクという飲料になる。③ギー(バターオイル)にする。バターを煮詰める。常温で1年保管可能。④ヨーグルトにする。ヨーグルトの種菌は乳酸菌発酵である。ミルクに種菌を入れて温め発酵させる。ヨーグルトに水を加えてラッシーという飲料にする。⑤チーズにする。ミルクに塩を加え煮る。酢を加えると固まる。⑥ホエー(乳清)をアルコール発酵させる。ミルクを揺らして、脂肪分とホエー(乳清)を分離する。⑦コンデンスミルク(練乳)にする。牛乳に砂糖を加え煮詰める。⑧アイスクリームにする。ミルク、生クリーム(脂肪分多い)、卵黄、砂糖を混ぜて加熱する。冷凍庫で時々かき混ぜながら冷し固める。⑨プリンを作る。ミルク、玉子、砂糖を混ぜて蒸す。⑩カスタードクリームを作る。玉子、ミルク、砂糖、薄力粉を混ぜ、加熱して混ぜとろみをつけ、冷ます。