ユーロから始まる世界経済大崩壊
(ユーロから始まる世界経済大崩壊 ジョゼフ・スティグリッツ)
欧州統一圏を目指したヨーロッパEU・ユーロ圏構想は、ユーロ圏の単一通貨システムの問題点により、通貨システムの破綻とその衝撃に見舞われている。イギリスの2016年6月のブレグジット(イギリス離脱)で、問題点が鮮明になった。EUはソ連崩壊後1992年、欧州の外交・安保、経済(通貨含む)、社会の統合を目指した。2002年単一通貨ユーロ発足。政策決定機関は、各国代表者で構成される理事会。加盟国28カ国。新自由主義、グローバル化、経済統合・金融化、法人税・所得税の減税、緊縮財政、貿易自由化、移民などを政策とした。ユーロ通貨は、単一通貨が資本と商品の移動をうながし、結果として経済統合が進み、ユーロ圏<全域>で福祉が向上するという前提であった。しかし、改革は不平等を拡大した。域内の経済競争により、勝者ドイツ、敗者南欧諸国ギリシア、イタリア、スペインなど格差が出来た。また、1988年からの30年間で、勝者は世界の上位1%の超金持ちと中国、インドの新興中流階層であった。敗者は、世界の非熟練労働者の賃金平準化圧力により、労働者階層と最貧国農民・最底辺層であった。貿易自由化は、正しい市場がないと機能しなかったのだ。しかも、所得分配も機能しなかった。シリア難民の移民も高賃金と雇用のあったドイツ、イギリス等に集中し、その国の労働者の雇用と賃金に打撃を与えた。ユーロを救うために、賃下げと増税と社会給付の削減が迫られている。EUの目的は、ユーロ圏のすべての人々に恩恵を与えることであった。しかし、現実は正反対である。個人と社会の福祉は、個人の安定と雇用にある。ユーロは目的ではなく、手段である。ユーロは救済可能であり、救済すべきである。経済統合よりも、連帯と政治統合を優先させるべき時である。