得する生活
(得する生活 橘玲)
お金本で、私の好きな作家・橘玲の本である。
1.貨幣 現在では、銀行の預金通帳に打ち出された電子データが貨幣だと信じられている。
2.金持ちと貧乏には経済学的な理由がある 人的資本(ヒューマン・キャピタル)論でベッカー教授はノーベル経済学賞を受賞した。教育によって知識・技術を獲得すれば、労働生産性を高め、賃金を上昇させる。医師・法律家・コンピュータ技術者の給与が高いのは、大きな人的資本(ヒューマン・キャピタル)を持っているからだ。ベッカー教授によれば、人的資本は、教育・技能・知識・健康で、近代経済国家の富の75%を占める。人的資本の蓄積は経済的成功をもたらし、成功者はお互いに信頼しあうことで、「関係資本(ソーシャル・ネットワーク・キャピタル)」を築き、より多くの収益機会を手に入れてゆく。信頼を失った者は、誰からも相手にされず、人的資本(ヒューマン・キャピタル)も関係資本(ソーシャル・ネットワーク・キャピタル)もやせ細り、ますます貧乏になってゆく。40歳を過ぎて、金も地位も家族もなければ、社会的信用を得るのは難しい。これが、私達の社会の身も蓋もない現実である。
3.現金は匿名の決済手段 決済で現金が多用されるのは、売り手側にプライバシー情報を提供したくないと考えているからである。銀行送金やクレジットカードは、決済の匿名性はないが、安全な決済方法であるので使われる。
4.保険は損することに意味のある宝くじ 生命保険加入者は、自分が生きて保険料が無駄になること望んでいる。
5.不動産とプライバシー 不動産は、預貯金や株式と同じ資産である。預貯金や株式は、プライバシー情報として保護されている。不動産は、所有の事実を、登記というかたちで、国家に報告し、第三者に開示している。国が権利を保護してくれる。その代償として、プライバシーがない。不動産は所有するだけで、固定資産税が課税される資産である。不動産に投資することは、国・自治体に余分に税金を納めるということである。
6.マンションは、高額な管理費に注意しなくてはいけない。
7.不動産のオークションである競売市場で、個人が有利な取引をすることは、極めて難しい。 不動産業者は、落札した物件をリフォームし、利益を乗せて、不動産市場で売却する。ほぼ相場どおりに落札価格が決まってゆく。競争相手が多く、競売は、プロにとっても、旨味のあるものではなくなってきた。個人投資家は直近の売買価格を知らない為、あてずっぽうになり、損をする。不動産は競売を利用するよりも、業者を通じて、売主と値引き交渉した方が、有利な条件で入手できるというのが、プロの間では、常識になっている。
8・リゾートマンションの値下がりは、やはり管理費にある。
9.人生を豊かに生きるのに、カネはさほど重要ではない。 ヒトは一匹の動物として生まれ、成長し,、老い、死んでゆく。有限な時間の中で、自らの人的資本を最大限に活かし、より多くの効用を獲得しようと生きている。カネはそのための手段にすぎない。カネに比例して、幸福が増えるわけではない。ヘーゲルによれば、生きる目的は、他者の承認を得ること(名誉・尊敬・愛情)にある。