中国は分裂する
(韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか2008年刊、 大原浩)
大原浩は1960年生まれで中国投資コンサルタント、豊富な現場経験から、2008年時点での中国に対する分析が正確である。
現在の世界情勢は、グローバル経済の歪みの顕在化によるブロック経済化、貧富の差の拡大化、など第2次世界大戦が始まる前と非常に似てきている。中国は自転車を漕ぐゾウにたとえられる。走り続けないと倒れるし、倒れたときの衝撃は破壊的である。直接のきっかけはインフレでしょう。インフレによる貧しい人々の困窮が政治を不安定にします。これは発展途上国に共通のものです。中国が目覚しい発展ができたのは、先進国のビジネスが、安いコストを求めて、大挙して進出したからです。しかしその陰で、先進国では、多くの中間層を支えていた製造業を中心とする安定した仕事が失われました。アメリカでは中間層といえる人々があまり残っていません。日本も近い将来そのような状況に陥るかもしれません。しかし、発展途上国での生産が必ずしも割安でなくなりつつあります。しかも、目先の利益が多くても、政治の混乱により投資したお金がゼロになっては意味がありません。ここ数年のあいだに日本から海外に出て行ったお金や企業は日本にもどりつつあります。
1.中国は10年間の文化大革命で古代から続いた文化は分断された。人を徹底的に信用しない心になった。すなわち現在の中国の歴史は60年しかないのだ。共産党は建国以来、反外国教育を徹底している。中国は水資源で成長の限界がある。コニカミノルタ事件で中国撤退費が7億円かかった。外国企業の優遇税制がなくなり、中国人労働者の終身雇用制度化が推進され高コスト化している。
2.中国投資では、売買が簡単で利益をすぐに日本に持ち帰れる株式投資に限定される。国際的大企業以外、直接投資で儲かった話は聞いたことが無い。1992年客家の鄧小平が南方順話で改革開放政策を打ち出し、台湾・シンガポールの客家が投資を始めました。その客家たちでも中国を信頼していません。中国から撤退しはじめている。バフェットは2003年アメリカ以外に初めて中国に投資した。そして2007年に売却撤退した。日本も反日暴動や投資条件の悪化から、日本への工場再移転が起きている。外資系企業も総脱出の可能性がある。
3.中国は共産党の一党独裁から平和的に複数政党に移行して、政治的な安定を取る可能性は高くないと見ている。中国は韓国・台湾のように無血で多党化できない。人民解放軍は中国の国軍ではない。中国共産党の私兵である。しかも、人民解放軍は文民統制(共産党と軍)が弱く、7大軍区(瀋陽、北京、南京、広州、済南、成都、蘭州)に半独立している。人民解放軍の立場・利益を代表するのが、中国共産党である。多党制になったら、その政権は軍隊を持たずに国を運営することになる。現実的にむずかしい。人民解放軍に基盤を持たない共産党指導者は、人民解放軍を完全にコントロールできない。無血で多党制に移行する事は無理である。
4.中国は都市戸籍と農村戸籍の2制度に分かれている。都市戸籍の3億人は支配者階級に属する人々である。農村戸籍の人は都市に出稼ぎに行くが、GDP成長率が8%を切ってくると2億人の人が失業する。都市戸籍の人の実質失業率は20%である。
5.GDPに対する個人の割合はアメリカ7割、日本6割、中国4割と中国の内需は小さい。海外に多量の輸出を続けないと、中国経済は成り立たない。輸出の半分は外資系企業による。生産基地としての優位性は揺らいでいる。2桁成長を続け、巨額の貿易黒字を稼ぎ出している間は、中国政府も国営企業を救済するでしょう。中国政府が国営銀行を救済できない状況に陥った時は、サブプライムローンと比較にならない激震が世界中を駆け抜ける。
6.中国が歴史上繁栄した時代の国土は、漢民族中心の現在の3分の1から半分の国土である。清朝の時代に拡大し、1億人位の少数民族の国土を組み込んだ。人口は13億人になった。少数民族はチワン族1500万人、満州族1000万人、回族900万人、ミャオ族800万人、ウイグル族700万人、モンゴル族500万人、チベット族500万人などである。沿岸部を除いた中国の3分の2は経済的魅力のない地域である。沿岸部の豊かな人は3億人といわれる。中国が今後も発展するには、人口も国土も半分以下にする必要がある。地球の資源と環境の限界を考えると、インド中国の25億人が豊かになる事は無理である。中国が混乱したら、分裂する。アメリカの連邦制型かヨーロッパの小国型になる。