独り身は食えぬが二人身なら食える
(母の教え、お金の流れで読む日本の歴史 大村大次郎)
この言葉は、母が教えてくれた。一人口は食えぬが二人口は食えるともいう。生活費は夫婦で暮らすほうが、独身でいるときよりも余裕ができる。独り身のときは無駄な金を使って不経済になることが多いが、夫婦で暮らすようになると、家計を引き締めて切り盛りするから、むしろ生活が楽になる。結婚は男と女の、生活・生存をかけた助け合い組織だ。
この言葉は、今の感覚で、共稼ぎなら生活できる、というのとは違って、江戸や明治時代の頃に、独身男性が、1人住まいでいて、外食や外で飲むために、貯金ができなかったり、ばくちや女遊びなどで借金をこしらえたりするのに、しっかりもののお嫁さんをもらえば、ちゃんと生活ができて、貯金もできるという真実を言う。収入は一人分としても、支出が二人分になって、それで数字上は生活が苦しくなるように見えるが、実際には、その方が食える、生活が安定する、それで苦しくなったりはしない、ということを示した言葉だ。
一方、お金の流れで読む日本の歴史(大村大次郎)は、結婚について、こう分析している。
①最近の日本人は愚かで、日本経済の先行きは暗い。
②日本は以前、賃金を上げることで経済を良くしようという政策で、トップと平社員の給料差は10倍だった。しかし、バブル崩壊以降、雇用よりも、企業や富裕層を潤わせる経済政策(トリクルダウン)になった。<これは、共産主義が崩壊したせいもある>。トップと平社員の給料差は100倍になり、サラリーマンの平均給与は下がりっぱなしである。一方、企業、富裕層には大減税を行い、企業の内部留保金はこの20年で2倍になった。富裕層も2004年の億万長者は130万人だったのが、2013年には270万人と倍増した。貧困層は収入が減れば消費が減るが、富裕層は収入が増えれば金融商品が増え、いまでは1500兆円になっている。デフレ・格差社会になっている。
③このままいくと、2~30年スパンで見れば、日本は必ず衰退する。少子高齢化が進むと、どんなに頑張っても、国力の低下は防げない。少子高齢化は経済問題である。男性の場合、正社員の既婚率は約40%、非正規社員は約10%である。現在、働く人の4割以上が非正規雇用である。10年前より倍増し、600万人いる。この10年間で300万人増加した。この人達が正規社員になれば、単純計算200万人が結婚できる。もっとも確実な少子化対策は、非正規雇用対策なのだ。
④日本は「誰でも普通に働けば、結婚して子供を育てられる国」にしなければならない。そうしなければ、日本という国に未来はない。日本には、貿易収支・貿易外収支も黒字の、現在まで蓄えてきた経済力・技術力をもってすれば、簡単に出来ることである。「特定の者が潤う国は、必ず滅びる」という世界の歴史の教訓を鑑みて、中産階級を増やして、結婚を増やし、少子化を止めなければいけない。