お金の流れで分かる現代世界史
(お金の流れで探る現代権力史 大村大次郎)
歴史を本当に動かしているのは、お金(経済)である。歴史は、出来事ではなく、お金を軸に考えてみると、あっけなく解答が見えることが多い。
1.イギリスはヤクザ紳士(海賊・金融・軍事)国家である。
①大航海・植民地時代に出遅れたイギリスは、スペイン・ポルトガルの世界大半の植民地を海戦で横取りした。エリザベス女王は海賊ドレイクに、マゼランに次いで、世界一周を行なわせ、国家予算の1.5倍30万ポンドを得て、債務を返済し、さらに地中海貿易に投資した。その資本で産業革命がいち早くできた。近代的な課税・国債・イングランド中央銀行を作り、巨額の資金を調達できるようになった。海軍力は世界一で2国標準主義(2位、3位合わせた以上の海軍力を持つ)を採った。19世紀から20世紀初めにかけて綿製品主力で世界貿易の2割を占めていた。ポンドが金本位制を導入し、国際貿易の基準通貨になった。
②1840年、イギリスは中国のお茶の輸入で大赤字になったので、インドのアヘンを密売、中国とアヘン戦争を起こし、密売を黙認させ、香港を99年間租借した。
③タックス・ヘイブン(租税回避、守秘制度)国(ケイマン島、香港、パナマなど)を運営しているのは、大英帝国イギリス(ロンドン・シティ)だ。そのユルイ規制のために、2~3,000兆円、世界の銀行資産の半分以上、多国籍企業の海外投資の3分の1が利用している。マネー・ゲームの総本山もシティだ。世界株取引の半分、国際通貨取引の35%、世界のオフショア銀行預金の55%を占める。「レポ105=決算期に債権を現金に代え、後で買い戻す」もイギリスが開発し、リーマン・ショックはロンドン発だった。ヘッジ・ファンドの本籍もタックス・ヘイブンにあり、収益を税金なしで再投資している。各国間の競争のため、大企業、富裕層の税金ばかりが下げられ、中小企業・庶民層の税金が消費税等で引き上げられ、富の集中と貧富の格差拡大が進んでいる。日本の年収200万円以下のサラリーマンは平成11年800万人から平成27年1200万人になった。フリーター、ニートを合わせるとこの数倍になった。日本の億万長者は2004年130万人から2013年は270万人になった。個人資産1700兆円の多くは、一部富裕層が持っている。貧富の格差拡大が、世界規模の社会混乱を招く可能性が高い。
2.アメリカは科学力と資源力と軍事力とドルの基軸通貨が世界NO1
①アメリカは世界3番目の国土の広さを持つ資源大国。第1、2次世界大戦で本土は戦地でなく戦争特需を受けた
②第1次世界大戦後、アメリカは世界1の工業国、債権国、世界最大の石油大国になった。
③第1、2次世界大戦の連合国の勝利はアメリカの石油が大きい。
④第1次大戦後の金(きん)の貯めこみ政策(通貨量増やさず)が1929年の世界恐慌をひきおこした。
⑤第2次世界大戦後、世界の金の7割を保持し、ドルが基軸通貨になった。
⑥1971年ニクソンショック。アメリカの赤字32億ドルは日本の繊維製品の貿易赤字から。その後、電化製品・自動車も加わる。
⑦現在アメリカは、経常収支と財政の赤字で、800兆円の対外債務がある世界最大の借金国。ドル基軸通貨でやっていけてる。
3.中国は世界1の貿易大国、外貨準備保有国、GDPはアメリカに次いで2位、純債権は日本、ドイツに次いで3位である。
①中国の輸出入に占める外資系企業の割合はそれぞれ5割を超える外国企業主導経済である。
②中国とアメリカはお互い最大の輸出相手国(中国、アメリカとも1位)、輸入相手国(中国輸入相手アメリカ4位、アメリカ輸入相手中国3位)である。中国はアメリカ国債の最大の保有国である。
③中国は貧しく、この先20年は成長し世界経済を牽引する。1人あたりGDPは8000ドルで日本の1/4。1/2になれば、GDPは今の2倍になる。
④今後、アメリカと中国の世界の経済・軍事覇権競争が起きてくる。
⑤中国の危険性。1)この100年で取られたものを取り返す政策2)世界の資源エネルギーを食い尽くす
⑥アメリカの深刻な問題 毎年の貿易赤字で世界最大の借金大国を、ドルの基軸通貨でしのいでいる国
⑦世界経済の深刻な課題 1)環境問題の深刻化2)各国の貧富の格差の拡大で、世界規模での社会不安・混乱が起きる