トランプ大統領とアベノミクス
(世界連鎖不況 みずほ総合研究所
消費税は下げられる 森永卓郎)
1.世界連鎖不況
①2008年9月、リーマン・ブラザーズ破産、世界金融危機発生。
②2008年11月、中国・胡錦濤政権「4兆元の景気刺激策」実施。
③2009年米国、EU、日本マイナス成長に陥落、中国1国のみ10%成長。
④2010年5月、ギリシア財政危機、欧州債務危機発生。
⑤2012年、中国「公共投資、住宅投資」で高成長し、「世界の救世主」になる。
⑥2013年、中国「生産能力過剰問題」発生。
⑦2014年、中国不動産価格下落、過剰資本・過剰債務に、金融・経済危機の懸念で「世界の時限爆弾」といわれる
⑧2015年、中国「財政健全性とGDP成長2つの維持」路線をとる
⑨2016年、中国経済減速で、原油・資源価格下落、新興国経済危機に。ブラジル、ロシア、ベネズエラ等マイナス成長に。
⑩米国シェールオイル開発で、中東不安定化、テロ・難民増加。統一欧州・EUの縮小。イギリスの離脱問題。
⑪パックスアメリカーナが戦後の自由貿易をささえた。米国は軍事費・社会保障費・経済格差問題の重みで、内向き指向になった。世界の警察官のコストを同盟国に求める動きもある。ウクライナ内戦のロシアと南シナ海支配の中国が、米国との対決を隠さなくなっている。欧州もロシアに対抗して、徴兵制の復活の動きが出始めた。
⑫BRICs新興国は資本流出にみまわれており、過剰債務・不良債権問題で新興国金融不安リスクもある。
2.日本の状況
2012年12月に誕生した安倍内閣はアベノミクスを実施した。内容の99%は、日銀の金融緩和である。日銀が銀行の国債を買い上げて、現金を銀行に出すことだ。2015年、日銀資産400兆円の9割が国債350兆円、日銀負債は日本銀行券100兆円、民間銀行が日銀に預けた預金280兆円で9割である。日銀が日本国債を持つということは、日本政府は利子なしで永久借金をしたということだ。民間銀行が日銀に預けた預金の払い戻し請求には、日銀券を印刷して払えばよい。日銀の黒田東彦総裁は、短期金利マイナス0.1%、長期金利0%、物価目標2%の金融緩和策をとっている。一方、日本政府の財務諸表は、負債1200兆円、資産700兆円、純債務500兆円。2017年の日銀保有の日本国債は450兆円であるので、現在、日本は実質無借金経営である。
日本の財務会計は、一般会計年間500兆円(内、特別会計400兆円、国100兆円)、重複分を除くと、250兆円(特別200兆円、国50兆円)である。
税収の推移は、安倍政権が発足した12年度43兆円、その後、44兆、47兆、54兆、56兆と拡大した。日経平均株価は2011年8500円、12年10500円、13年16000円、14年17500円、15年19000円、16年19000円、17年23000円と上昇している。アベノミクスで経済のパイは大きくなったが、企業収益に回され労働者には行かなかった。2014年4月消費税が8%に上がると、消費が失速し、14ヶ月マイナスとなった。次の2019年10月の消費税10%への値上げは疑問視され出した。
3.トランプ大統領
2017年1月トランプ大統領が就任した。
①信念「アメリカ製造業の復権」、アメリカのことしか考えないアメリカ・ファースト。
②マクロ経済政策 ・公共事業展開 ・減税 ・財政出動 ・ドル安・円高 ・オバマケアの廃止(負担減)
③駐留米軍経費の負担増。日本最大6000億円の増加。
④TPPの代わりに二国間交渉。先の合意内容より不利な条件に。
⑤金融緩和が出来なくなる。トランプ大統領は、日本の金融緩和・円安を非難している。これ以上の緩和は認められない。円高トレンドに戻る。2018年1月、米財務長官のドル安容認で、2015年の120円から108円に。製造業の収益は伸びない。国内消費不振により、不況の恐れが出てきた。19年の消費税増税は難しくなった。