無縁社会から準・血縁社会に

無縁社会から準・血縁社会に

(多縁社会 藤原聡子)

2010年、NHKの番組「無縁社会」で、80歳の老人の孤独死が取り上げられ、社会から孤立する老人の現実が浮彫りにされた。2011年3月東日本大震災が起き、支え合いや助け合いが大切であることを、日本人は改めて気付いた。絆という言葉が使われた。

かって、戦前の日本は、家族は産業を営む「企業」の単位であった。家族は経済活動を営む運命共同体であった。今でも、日本以外の東アジア、東南アジアの人々は、経済共同体としての家族・一族を組織している。日本は、戦後の高度経済成長の中で、大企業で働くサラリーマンが誕生した。企業から給料をもらい、家庭を持ち、家を持ち、核家族として、企業の活動に全面的に参加した。老後も、退職金をもらい、夫は終身厚生年金、妻は終身国民年金をもらい、夫は終身企業年金もあった。その中から、税金、介護保険、国民健康保険を支払っても、手取りで30万円/月をもらえた。そして、戦後は、西洋流の乳肉食が進み、医療技術サービスが普及し、日本人の老人は、無理しなければ、90歳までは生きる状況になった。企業から卒業するのが、65歳としても、25年も時間がある。

ところが、ソ連崩壊後ワン・ワールドの世代、バブル世代・バブル崩壊後の世代(1998年以降、20年前)は、長期デフレで成長が厳しく、少子高齢化で市場が縮小し、経済が小さくなったために、社会保障(年金、生活保護などのセフティーネットも含め)が、だんだん機能しなくなってゆく可能性が高い。企業も25年も卒業生を支えられなくなってきた。

バブル後世代の65歳から90歳までの老人時代を、誰が支えるのか。衣食住通信交通趣味や介護や葬送はどうするのか。退職し、80歳になったバブル後世代は、どこで、どうして暮らしているのだろうか。孤立することの不安はますます大きくなっている。

「ファミリー(兄弟姉妹、従兄弟従姉妹等横の血縁、親はいない)・レンタル(有料)・シェア(共有)・ハウス(中古住宅、寝室のみ専用、食堂・トイレ・風呂は供用)」という家族・一族が利用できるハウスが解決策になると思う。

ファミリー限定なら、事前にキーを渡しておき、メールで管理者に泊まる旨知らせ、料金後払いで、1日1,000円、1か月なら(電気・ガス・水道・風呂代込み)1人1~2万円くらいで運営できる。2地域居住(季節居住、週末居住など)も可能である。レンタル(有料)なので、誰にも気兼ねする必要はない。シェア(共有)なので、安く、限度のある会話だけで済む。戦前のような、封建的大家族のような、堅苦しさのない、自由な居住が可能になる、準・血縁関係居住になると思う。