最新ゲノム学でわかる人類史

最新ゲノム学でわかる人類史

(ゲノムが語る人類全史 アダム・ラザフォード)

ゲノムとは、ドイツ語で、遺伝子+染色体という合成語である。

染色体は、細胞の核の中にある。染色体液によく染まるので、染色体といわれる。染色体の中にDNAがある。DNAは2重ラセン構造で、4種類の塩基で出来ている。4種類の塩基を、文字代わりに使っている(30億文字)。地球生命40億年の歴史を語っている。よく、バナナが50%、犬が80%、チンパンジーが98%DNAの基本部分が同じと言われる(変異はしている)。遺伝子は、DNAの中のタンパク質のつくり方を書いたもので、DNAの1.5%を占める。遺伝子情報以外は、DNAを制御する情報である。ゲノムは30億文字からなるDNAの総体である。遺伝子情報と制御情報からなる。1940年、DNAが遺伝の分子であることを発見。1950年、2重ラセンが遺伝情報分子であることを発見。1960年、生命はタンパク質で出来ており、DNAがタンパク質を指定することを発見した。

2001年、ヒトゲノム解読計画により、クリントン大統領より、最初のヒトゲノムが発表された。2016年には、15万人の完全な塩基配列(A,T,G,C)が解読された。いまや、古代人やネアンデルタール人のDNAも抽出している。新たに人類史が分かってきた。

1.ネアンデルタール人との交配

DNAは時間と共に、ゆっくりと、時を刻むように変化する。どれくらい昔に変化したかは、推計できる。ネアンデルタール人は60万年前にヒトから分岐して、30万年前から3万年前まで、イスラエル、中央アジア、西ヨーロッパに住んだ。我々ヒト(ホモ・サピエンス=賢い人)は、10万年前にアフリカを脱出した。当然、黒人であった。10万年前=中東、7万年前=インド、3万年前=ヨーロッパ、アジア、1万年前=アメリカに進出した。

現世人類ヒトはネアンデルタール人と交雑し、3%がネアンデルタール人DNAであることがわかった。(30億文字中の100万文字)さらに、ロシアのデニソワ人(ネアンデルタール人とホモサピエンスの中間)と5%まで刷り込んだ。

2.農業革命と突然変異

長らく狩猟生活を送っていた人類は、1万年前に、農耕・牧畜を開始した。この時期、2つの突然変異が人類に拡散した。5000年前に、ロシアから白人の農耕・遊牧民がやってきて、ヨーロッパ中にひろまった。狩猟民のゲノムは農耕民のゲノムにゆっくりと総合された。ラクターゼ(乳糖分解酵素)活性の突然変異は1万年~5000年前に出現した。もう1つは肌の色だ。5万年前~8000年前の中東、南ヨーロッパ人は黒人であった。11の遺伝子が色を決める。ユーメラニン(黒色、褐色)、フェオメラニン(赤色)である。髪と肌の色は変異は、日差しに対する適応である。5000年前に東から来た遊牧民の白い肌色フェオメラニンは急速に、ヨーロッパに広がった。白人はわずか4000年位前から出現したのだ。

乾性耳垢について、アフリカは乾性耳垢はゼロである。韓国はその逆である。また、わきがも少ない。太い黒髪、シャベル型切り歯の前歯がある。これらは370A の突然変異の結果である。東アジア人は、汗腺の密度が高いのだ。高温多湿な環境では、効果的な冷却システムになるので、3万年前、中国南部に出現したと考えられる。人種を分ける身体的な特徴は、人類の歴史の残したものに過ぎない。

3.現存する全人類の共通祖先はわずか4000年前、ユーラシア中央にいた

私たちは、両親を持ち、その両親にもそれぞれ両親がいる。1000年までさかのぼると、これまで生きた人の数十億倍のヒトがいたことになる。わずか数千年をさかのぼるだけで、現在生きている70億人のほとんどが、1つの村の住人に由来することになる。すなわち、中世までさかのぼると、ヒトは近親交配してきたのだ。ハプスブルグ家は1世紀以上族外婚を止めたために、劣勢遺伝子がマスクされずに、死亡率が高くなり断絶した。混血のほうが優性遺伝子が混ざり、安全なのだ。