戦後の核家族から昔の拡大家族への回帰
日本社会は戦後、核家族になった。それを許したのは、日本の高成長と富国・富民化にあった。各人が家を持ち、年金と貯金で90歳位までの生活が保障されていたからだ。
しかし、人生90年時代、引退後の生活を年金と貯蓄/投資だけで乗り切るのは、難しい状況になってきた。日本が貧国化して年金が減少してゆくのと、少子高齢化が進み、年金、貯蓄利子、投資収益だけでは、生活を支えることが難しく、75歳もしくは80歳まで働かなければいけなくなったからだ。昔は、農業で普通の老人は80歳までは働いていた。現代は80歳まで働ける仕事はどれだけあるだろうか。しかも、80歳から90歳の間は、後期老齢者で、軽労働しかできなく、介護も必要になってくる。下の世話が自分で出来なくなったら、介護老人ホームに入るしかないのだが、その前の段階・期間が10年以上ある。核家族(伴侶に先立たれた1人家族も含む)の1ヶ月の生活費は、持ち家で25万円、借家だと30万円はかかる。親戚、子供から送金してもらうにも、10万円/月はおろか、5万円/月も厳しい時代になっている。
独居核家族(単身世帯)の1ヶ月の生活費、25~30万円/月、3人合計75万円~90万円/月必要なところが、血縁のある3単身世帯が「拡大家族」で一緒に住めば、30万円強/月くらいですんでしまう。余ったお金は、各人が趣味や旅行に費やせるのだ。これで、ようやっと、現代リッチ生活を享受できるのだ。
要するに、75歳以降、後期老齢者は、昔のように、同居人の助けを得る生活に戻らざるを得なくなっている。血縁のある独居老人は「拡大家族」の家に集まり、お互いに助け合いながら、生活するしかないのだ。
単身世帯が増え、人と人の関係が希薄化して、社会と孤立する無縁社会になったといわれる。全国年間3万人強といわれる孤独死は、高齢化社会の象徴といわれる。人間は誰でも1人で生まれ、1人で死んでゆく。しかし、生きているかぎり、1人では生きらないのだ。孤独な生活は出来ないのです。
単身世帯は、人や社会と孤立化している故、個人の自由が追及できる。しかし、高齢者になると、「拡大家族」で、1つ家の中で住まねばならない。単身世帯の時より、自由が制限される。しかし、しかたがない。先立つお金と生活に必要な労働力がないのだ。工夫して、日々を楽しむしかないのだ。老年を楽しむしかないのだ。
*核家族:夫婦と未婚の子供だけからなる家族
*拡大家族:血縁にそって拡大する家族