消えた年収
(消えた年収 北見昌朗)
2009年といささか古い本で、まとまりが悪い本だが、確認しておく必要があると思う。この本のポイントは、民間サラリーマンの給与統計は国税庁(徴税の観点で真実)と人事院(公務員の給与決定で大手のみ)の2つがある。この本は、国税庁のデータを分析したもので、実態を表している。まとまりが悪いので、目次の部分中心でまとめた。
1.1997年(最後に最も景気が良かった年)から2007年(2008年9月リーマン倒産ショックの1年前)の10年間で、日本の給与所得(男女計、勤務1年未満含む)は、220兆円から200兆円になり、20兆円(10%)減少した。
2.1年勤務の勤労者数変わらず。男が100万人減り、女が100万人増えた。平均年収は470万円から440万円に30万円減った。平均年収:男540万円(平均年齢:44歳)、女270万円(44歳)。
3.年収300万円以下が32%から39%(約4割)に増えた。300万円ー700万円は50%から47%に。700万円以上も18%から15%に減少した。
4.地域別には、給与総額減少地域:大阪(マイナス5.5兆円)、仙台(▲1.9兆円)、福岡(▲1.5兆円)。勤労者人数:減った地域、仙台(▲22万人)、福岡(▲14万人)、大阪(▲13万人)。増えた地域;東京(+60万人)、関東(+14万人)、名古屋(+9万人)。平均年収の下がった地域:大阪(▲60万円)、福岡(▲40万円)、沖縄(▲40万円)。年収300万円以下:沖縄60%、仙台50%、四国50%。全国40%
5.人材派遣業はサービス業に分類されるが、サービス業は急拡大し、低年収化をもたらした。東京・名古屋は、派遣従業員が増え、平均年収の低下をもたらした。
6.政府の財政 給与所得が220兆円から200兆円に減り、税収入は12兆円から9兆円に減った。歳出は減らさなかったので、国債の発行高が増えた。
7.消費税増税、社会保険料引き上げで、給料の手取りが減少し、家計負担が増えた。
8.年収減少の原因 ①小泉改革説②派遣社員説③中国原因説(日中貿易と日本の給与は反比例する)とあるが、筆者は中国原因説をとる。
日本の消費者が安い商品を求める→日本の会社が安い労働力の中国に工場を作って輸入する→日本国内で仕事が減り、年収が下がる→日本の消費者の収入が減り、安い商品を求める。こういう悪循環に陥り、日本の年収は中国の低年収(いまでも40万円位)に近づいてゆく。
9.筆者の恐れる10年後シナリオ 夫婦共稼ぎ500万円(夫300万円、妻200万円)時代の到来。
<2017年11月の状況>
日本人の年収 年収300万円(ボーナスなしで月給25万円、手取り20万円位)以下の割合
男性 25%(4人に1人)、女性 65%(半分以上)、男女計平均 40%(2013年の状況)
金融資産ゼロ世帯 単身世帯 50%(半分)中央値は30万円、2人以上世帯 31%(3人に1人)
金融資産ゼロの世帯が多いことについて、若い世代の非正規不安定雇用が影響している。一定の資産を持てないと家庭を持つことにちゅうちょしかねないと懸念されている。未婚率(独身割合)は女性40歳で21%(5人に1人)、男性40歳で31%(3人に1人)である。