資本主義とは何か

資本主義とは何か

(資本の世界史 ウルリケ・ヘルマン<ドイツジャーナリスト>)

 「資本主義」とは何か。資本を主義(行動指針にする方針)とすること。資本を主義とすることは、「資本を投入することにより、利益を上げる」ことを目的にする考え方である。

では、「資本」とは、そもそも何なのでしょうか。それは、発生した歴史から分かります。1750年ころ、イングランドで紡績工場主が機械化を思いついたことにより発生しました。すなわち、人間の労動力が機械・技術によって工業化されること(産業革命)により、初めて「資本」ができて、「資本主義」が出来ました。

 お金はメソポタミアの時代からあり、4000年の歴史があります。科学技術の知識、たとえば、蒸気機関はアリストテレスの時代からありました。これらを工場に導入して、生産性向上を勝ち得たことが、資本主義なのです。資本の指数関数的な成長に結びつきました。「資本」とは、いわゆる人(教育された)・物(工場・店舗)・金(資金)・情報・技術なのです。「資本」とは、お金ではなくて、技術上の進歩であり、生産性向上なのです。

 資本主義の成果は驚異的なものでした。ヨーロッパ人は古代から何千年も変化がありませんでした。1800年から大変化しました。身長が10センチ伸びました。平均寿命は倍になりました。ドイツ人の人口は3倍になりました。国内総生産(GDP)は5倍になりました。5世代前より20倍豊かになりました。1人あたりの平均収入は1300年のときは、中国と同じでした。1900年の時、中国は変化が無かったのですが、ヨーロッパ人は急成長して、中国人の30倍も豊かになったのです。

1990年、東西の壁がとりはらわれ、世界貿易は20年で2倍になりました。全世界が資本主義的な交換でひとつになり、グローバリゼーションが生れました。多国籍企業が貿易を生み出しました。しかし、せいぜい生産部門が移転されるだけで、多国籍企業は無国籍ではなく、どこかの国家を故国としています。

 1815年イギリスは800の銀行ができ、金融機関は「金融・信用創造」を発明しました。信用貸付をすれば、銀行はそのお金を顧客の口座に記載して、預金は後で生れます(信用創造)。お金は資本に変わりました。貸付による融資が成長を引き起こすようになったのです。

信用貸しで、株式や不動産を買い続けると、値上がりして、信用バブルが築かれます。実際には、モノは何ひとつ生産されません。相場が上がっただけです。GDPという経済実態と金融資産の不一致はいつかは露呈し、クラッシュに至り、資産価格が急速に下落して、バブル崩壊がおきます。「近代資本主義」は、規則的に危機に見舞われています。