お金の流れで分かる権力

お金の流れで分かる権力

(お金の流れで探る現代権力史 大村 大次郎)

出来事の裏には、時代の欲するもの=お金が絡んでいる。

1.イギリス=蒸気機関、帆船、植民地、産業革命、基軸通貨

①スペイン、ポルトガル輸送船を襲う海賊ドレイクをエリザベス女王が認め、海軍提督にして、スペイン無敵艦隊を破った。2,3位国合計以上の海軍力を持つことを原則とした。戦費調達のため、イングランド銀行を設立し、イギリス政府は借入窓口を一本化した。ポンドを金兌換にして、基軸通貨にし、世界初の金融帝国になった。第1次大戦でイギリスの綿織物業・工業は日本とアメリカに追い越され、アメリカ債権国、イギリス債務国になった。

②タックス・ヘイブンを運営しているのは、イギリスである。19世紀以来、タックス・ヘイブン国(旧イギリス植民地)のバックには、イギリスがいる。ロンドン・シティのオフショア預金は3兆ドル(世界市場55%)で、ウオール街を凌駕し、国際株取引の半分を占めている。リーマン・ショックもロンドンのリーマンが誤魔化して取引していたからだ。100兆円近い税収を奪っているタックス・ヘイブン。世界中の大企業・富裕層の税金の抜け穴になっている。貧富の差が拡大しているのだ。日本も法人税が60%から30%に、相続税が75%から55%に下げられた。タックス・ヘイブンを使える大企業の税金を下げ、中小企業の税金を上げている。世界のわずか60人の富豪資産が200兆円で、世界人口の下位から半分36億人分の資産と同額を持っている。日本も年収200万円以下のサラリ-マンは、2000年800万人から2014年1100万人になった。(フリーター、ニート含まず、含めるとこの数倍になる)日本の億万長者は、2004年130万人が、2014年300万人に達している。個人金融資産は1700兆円あるが、一部の富裕層がにぎっている。

2.アメリカ=科学技術、鉄道、飛行機、電気、自由競争、資源の宝庫、石油、金、基軸通貨、IT

①第1次世界大戦の時代、石油エネルギー革命が起きた。アメリカは工業国で世界1の産油国であった(中東原油発見は第2次世界大戦時)。戦場にもならなかったアメリカは輸出を伸ばし、債権国になった。第2次大戦までモンロー主義だった。1923年世界の金の4割を保有した。1929年、世界恐慌起きる。第2次大戦後、世界の金の7割を保有し、基軸通貨国(世界の銀行)で、になった。1971年、固定相場制の日本、西独の輸出力に負けて、双子の赤字からドルの金兌換を停止した。1991年東西冷戦が終結し、アメリカは世界唯一の超大国になった。世界最大の借金国でも、ドルが基軸通貨でドルを売って収入にしている。基軸通貨を脅かすものは、イラクのフセインのように、世界最大の軍事国アメリカにつぶされるのだ。

3.ソ連=後進国の共産主義傾斜生産主義、資源大国

①第1次大戦中、ロシアに共産主義革命成功。戦後、共産主義の傾斜重工業・生産主義で工業化に成功した。植民地がなくても、ソ連は資源大国であった。

②第2次大戦後、東欧共産圏のブロック経済化をおこなった。ソ連の資源大国が可能にした。

③共産主義の上位下達方式が創意工夫を妨げ、また、冷戦による米ソの軍事競争、途上国支援競争で破産し、1985年ゴルバチョフ時代になり、情報公開、原発事故を経て、1991年ソ連が解体し、ロシアに戻った。

④2000年プーチンが大統領に就任。資源・石油(世界2位)価格の上昇により、立て直すが、再度、原油価格低迷、ウクライナ紛争などで経済悪化している。

4.アラブ=石油

①第2次大戦前後、中東の石油発見。石油利権闘争が始まる。イギリスの分割統治方式でアラブとイスラエルの国家闘争、石油の国有化、王国とイスラム宗教家国家との確執、アラブ諸国間で石油有無の貧富の差、イラク・フセインのユーロ使用宣言に対するアメリカのフセイン潰しと、その残党による2014年イスラム国の樹立とテロの拡大である。

5.EU=市場統合、共通通貨、職業移動自由、関税自主権なし

①1993年、EUが誕生した。EUとはヨーロッパ連合であり、28カ国加盟している。市場統合、共通通貨ユーロ、移動の自由、人権・福祉の保護である。ドイツは国内から英米駐留なくしたい、フランスはアメリカ経済支配からの脱出、ソ連圏の東欧支配からの西欧地位向上をねらった。

②EUの弱点は、イギリスのEU離脱、EU内の格差(ギリシャ危機など)である。ユーロの外貨準備金シェアは20%、ドルは65%である。

6.中国=13億人の人口、資本主義と共産主義の良いとこ取り、共産独裁主義の欠点

①1840年、イギリスのアヘン戦争以来、各国の侵略を許した。1949年毛沢東の中共ができた。1950年ソ連の支援により、工業化に着手した。その後、世界の市場と距離を置いていた。1972年日中国交回復。1979年米中国交回復。1979年、日本は賠償放棄の代わりに、円借款経済援助実施。外資導入による資本と技術の導入である。安い労働力が使えた。現在、第1位の貿易大国である。アメリカの経済・軍事覇権を脅かす国となってきた。アメリカには借金があり、中国には貸金がある。アメリカと中国はお互い第1位の輸出先である。

②中国の一人当たりGDPは100万円、日本とアメリカは400万円、イギリスは380万円である。中国の一人当たりGDPはまだ伸びしろがあり、あと20年くらいは伸びる可能性がある。輸出品の価格競争力がまだある。(中国の富裕層365万人=3000万円、中間層1000万人=800万円、農民層12億人=100万円の平均所得になり、格差激しい)

③中国の重篤な2つの問題点。1つは中国は、近代における侵略から、国際ルールの外にいた。国際協調のルールと言っても、中国は経済力・軍事力も強大になったのだから、今まで取られたものを取り返すのだということだ。2つ目は資源問題である。13億人の資源エネルギーを確保せねばならない。この2つの狂気に対して、冷静に対処せねばならない。