アベノミクスとは何か

アベノミクスとは何か   (三橋貴明)

2012年12月第46回総選挙で、自由民主党安倍晋三総裁がデフレ脱却を訴え、大勝した。アベノミクスとは、①日本銀行の金融緩和政策(国債買取)②公共投資を中心とした財政政策③成長戦略の「3本の矢のデフレ脱却策」である。2017年9月時点で、株価も2万円近辺(2012年は8000円)であり、景気回復してきたと言える。

日本がデフレ脱却を打ち出し、成功させたのは、2回目である。1度目は、1931年、政友会の犬飼首相、高橋是清蔵相のときです。1920年大正バブル崩壊、27年昭和金融恐慌、29年世界恐慌と、不況・デフレが長引いた。ときの政権の民政党は、増税や政府支出削減というデフレ促進策を取り続け、国民はデフレ不況に苦しめられた。一方、高橋大蔵大臣は、①金本位制からの離脱による円安政策、②日本銀行の国債買取、③公共事業の財政出動というポリシーミックスのデフレ脱却策であった。1935年ころには、デフレ脱却を果たした。

1990年、ソ連崩壊後、日本は、世界市場に共産圏国が参入してきて、1998年ころからデフレ不況が深刻化した。アメリカ1強になり、グローバリゼーションが主流になり、製品の低価格化、格差拡大が進んだ。この間、日本は10年にわたり、財務省、日本銀行が、アメリカのレーガノミックス、新自由主義を見習い、財政赤字の是正、政府支出削減、増税、市場競争激化の政策を押し進めた。実は、レーガノミックス、新自由主義が効果を発揮したのは、インフレ時代だったからである。レーガノミックス、新自由主義は、物価を押し下げるデフレ深化策・インフレ不況対策である。その結果、日本は15年におよぶデフレ不況に苦しんだ。

一方、アベノミクスは、高橋是清の実施策と同じデフレ対策であり、レーガノミックスと真逆である。今回の成功により、この政策の有効性が確認された。現在、世界経済は、諸外国でバブルが崩壊し、デフレ化が進み、失業率が急騰するという問題が出ている。経済政策として、1分野を画し、今後、諸外国の政策に参考になると考えられる。