アメリカを知る

アメリカを知る  日高義樹

日高義樹は、NHKのワシントン特派員で活躍し、50年もアメリカと付き合ってきた。その彼が自分の経験から、アメリカを要約して語る。日高義樹は個人的にも、銀座のクラブでカラオケを歌いまくっていたのを、知っているが、たいへんうまかった。

1.共和党と民主党の違い

アメリカは、南北戦争、北部共和党のリンカーン大統領、レーガン、ブッシュなど国の工業化を推し進めた結果、ビジネス、国際的、経済力、軍事力のアメリカになった。豊かな人が共和党、貧しい人が民主党であった。共和党はビジネスの党で、中小企業を基本にしている。一方、民主党は19世紀にやってきたヨーロッパからの貧しい人々・労働者とアントレプレナーの政党になった。民主党のルーズベルト大統領のニューディール政策は、アジアからの移民排斥、安い工業製品を敵視する排日運動、対日戦争になった。オバマ政権も大きな政府、福祉政策偏重、アメリカ製造業の規制強化と増税、内国向き政策になった。民主党の支持者は女性、黒人、ヒスパニック、アジア系である。オバマ大統領が再選できたのは、アメリカの人口構成が変化し、白人国家ではなく、多民族国家になったからだ。20年後は白人が過半数を割ると見られる。また、1990年にはアメリカの子供たちの6割は、父親のいる家庭で育てられていた。しかし、2008年には、4割に減ってしまった。過半数が母子家庭で、父親がいない。社会の基本的性格が変わってきている。そして、将来に対して、不安感を持つようになってきた。古き良き時代のアメリカは無くなりつつある。

2.戦後の日本国憲法は半分の主権しかない

1947年5月3日に日本国憲法が公布されたが、このときは、アメリカ軍の占領下にあった。1952年サンフランシスコ平和条約で、日本は占領状態から解放されたが、経済、金融主権のみであった。日米安保条約を結び、政治、外交、軍事の主権は与えられなかった。今でも続いている。これは、安倍首相の靖国神社参拝にアメリカが不快感を持った事で分かる。ワシントンは「自分の国を自分で守る体制を持たないにもかかわらず、安倍首相は周りの国に喧嘩を吹っかけるような行動をとった。国際常識に外れた愚かな行為だ。」というコンセンサスだ。日本はいまだにアメリカの力がなければ、中国や北朝鮮の核を含む攻撃を防ぐことはできない。紛争のタネを撒けば、必ず反撃や攻撃を受けるというのが、国際常識である。靖国参拝は平和ボケの行為である。国の利益と国民を守るという政治的責任を、アメリカに肩代わりしてもらってきたのである。

ただ、平和憲法にも良い点は多々あった。戦後の民法、商法、刑法は、日本国民に豊かで民主的な生活を与えている。そして、1970年代から、アメリカは日本に軍事力強化を要求してきたが、自衛隊が傭兵のごとく使われることを懸念して、かわして逃げてきた。戦後70年、日本は戦争をせずに過ごせた。

3.アメリカの意向

アメリカは、アジア全域を中国に独占されることを恐れている。アメリカ軍をグアム、ハワイ、アラスカに後退させつつあるものの、アジアの前進基地を必要としている。そのために、日本の基地はなくてはならない。基地の問題は切り札的存在である。