グローバルスタンダードとは何か?
((日本人) 橘 玲 より)
グローバルスタンダードとは、アメリカで出来たものである。しかし、「アメリカ人にとって都合の良いルールではない」。アメリカの主流派であるWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)にとっては、自分達が他の人種より優遇されるのがもっともよいルールだ。それに対して、最初はアイルランド系やユダヤ系の移民が、次いで、黒人やヒスパニック系がはげしく抗議し、ときには血を流してつくりだしたのが、「人種や性別、宗教で国民を差別しない公平なルール」、すなわちグローバルスタンダードなのだ。
アメリカ人は自分達だけのローカル空間と、異なる人種が同席するグローバル空間をごく自然に切り替える。ローカル空間(内輪)では人種差別的なジョークを連発しても、ひとたびその場がグローバル空間になれば、それに合わせて態度を変えるのが当然のルールなのだ。グローバル空間では、ローカルルールはグローバルスタンダードに従うしかないのだ。話し合うとき、日本人が武士道を、中国人が儒教を、インド人がヒンズー教を、アラブ人がイスラム教を持ち出したら、話し合いが成立しないだろう。グローバル空間では、それに適した新しいルールを作るほかないのだ。アメリカ企業の能力主義は、能力以外、人種、宗教、性別、年齢で社員を差別することがゆるされないからだ。履歴書には生年月日や写真(性別、年齢が一目瞭然)はない。日本企業の終身雇用・年功序列制度はグローバル空間では許されないのだ。株主資本主義も、異なる株主のいるグローバル空間ではスタンダードになる。アメリカでは、すべての制度が(理念的には)グローバルスタンダードで作られている。それが、世界に広がっていくのは、アメリカの陰謀ではなく、世界のグローバル化の必然的な結果なのだ。
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