通貨発行益(シニョレッジ) その1
アメリカ最大の輸出品はドル。(通貨の興亡-ポンド、ドル、ユーロ、円、人民元 黒田東彦)
18世紀末(1900年頃)、イングランド銀行は、政府の銀行、銀行の銀行、独占的な発券銀行という中央銀行の3つの役割が確立した。イングランド銀行が中央銀行のビジネスモデルになり、その後、世界中に中央銀行が作られた。イギリスは、18世紀後半のアメリカ独立戦争、ナポレオン戦争の戦費調達のため、国債を発行して、イングランド銀行に引き受けてもらう。ポンドが増発され、金兌換が出来なくなり、インフレになった。ポンドの増発をコントロールするため、金兌換を復活した。そして、第1次大戦まで、1873年から40年間、ポンド本位の国際金本位制という(ポンド)国際通貨制度が確立した。その背景には、毎年7%に及ぶ、イギリスのGDP経常黒字があった。第1次、第2次世界大戦で金兌換は停止され、国際金本位制というポンド本位制は崩壊した。
1950年初頭に、圧倒的な経済力、金準備、軍事力を背景に、アメリカドルが国際通貨になった。しかし、ベトナム戦争とインフレの激化により、国際収支、経常収支が赤字になり、金兌換が出来なくなった。1971年、ドルの金兌換停止のニクソン・ショックが起き、一挙に為替調整(ドル安)・フロート体制になっていった。アメリカは、金兌換をやめ、野放図なドル安にしたら、二桁のインフレになった。1981年レーガノネミックスにより、長期金利が高止まりし、資本が流入し、ドルの為替レートが40%も上昇した。企業や議会は保護主義に走った。ドル高是正のため、1985年プラザ合意がなされ、円は250円から1989年には半値の125円になった。1995年には80円になった。このドル安により、アメリカ経済は、ITの活用、新ビジネスモデルが発展し、復活した。
ドル国際通貨制度のメリット。アメリカはアメリカの政府も企業も、外貨建てで借りる必要がない。ドルが切り下がっても、債務の実質価値が増えるわけではない。純債務国なのに、いくらでも債務がまかなえる。ドルが下落すると、輸出競争力が高まり儲かる。バランスシート上、損をするのは、外国人だけである。ドル国際通貨制度は、アメリカに通貨発行益とマクロ的な利益を与えている。
連邦の財政赤字と経常赤字の双子の赤字により、ドル安が主張される。経常赤字は外国人との間のことなので、ファイナンスできる限りは、ただで財貨・サービスを手に入れることができる。ある意味で、ドルがアメリカ最大の輸出品となっている。ドルに代わる国際通貨が出てこないかぎり、ドル国際通貨制度は続く。ユーロ、アジア通貨など将来可能性があるが、金は量が少なくなりえないと思われる。
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